「青い野を歩く」
アイルランド人作家の短編集。
主人公は皆、窮屈で不自由な思いをしている。
読んでいるとそれぞれの小説の世界にすっかりはまり込み、
さながら水の中にいるような気分。
文章はすっきりして読みやすく、情景が浮かんでくる。
表題作は特に印象深い。
かつて恋人だった女の婚礼をあげる神父。
式の後のパーティーで女の首飾りの真珠が床に落ち、神父が拾う。
真珠には女の温もりが残っている。
物語の最後、神父は「・・・生きているとは、何と不思議なことだろう」と実感し、
明日の暮らしを思うようになる。
そこに至るまでの神父の行動と心情の変化をなぞることで、その独白にとても共感できる。