Coataroの読書ときどきヒトリゴト

本を読んで感じたことなどを記しています。

青い野を歩く

「青い野を歩く」

クレア・キーガン著 岩木正恵訳 白水社 2009年

 

青い野を歩く Keegan, Claire(著) - 白水社

 

アイルランド人作家の短編集。

主人公は皆、窮屈で不自由な思いをしている。

読んでいるとそれぞれの小説の世界にすっかりはまり込み、

さながら水の中にいるような気分。

文章はすっきりして読みやすく、情景が浮かんでくる。

表題作は特に印象深い。

かつて恋人だった女の婚礼をあげる神父。

式の後のパーティーで女の首飾りの真珠が床に落ち、神父が拾う。

真珠には女の温もりが残っている。

物語の最後、神父は「・・・生きているとは、何と不思議なことだろう」と実感し、

明日の暮らしを思うようになる。

そこに至るまでの神父の行動と心情の変化をなぞることで、その独白にとても共感できる。