「脱北者」 韓元彩著 2002年
北朝鮮から三度逃げようとして、とうとう果たせぬまま同国内で殺された男の手記。度重なる拷問で廃人寸前になりながらも奇跡的に三度目の脱出に成功、韓国への亡命を目前にしながら強制送還されてしまった。同氏はその三日後に死亡、その妻は拷問の凄まじさに耐えかねて発狂してしまったという。
読んでいてひたすら暗くやりきれない気持ちになるひどい話だ。手記の終わりが脱北に成功したところで終わっているのが痛ましい。あれほど酷い目にあっても希望を捨てず、ようやく未来がひらけたかと思った時に全ての道が絶たれるとは。どんなに無念だったことだろう。