Coataroの読書ときどきヒトリゴト

本を読んで感じたことなどを記しています。

30の神品

「30の神品 ショートショート傑作選」

江坂遊選 扶桑社 2016年

 

30の神品 ショートショート傑作選 江坂 遊(監修) - 扶桑社

 

「一作家一作品の条件で「ショートショートの代表作を一冊にギュッと集めた本」。

星新一山川方夫筒井康隆など日本の作家はもちろん、

ヒッチコックスレッサーブラッドベリなど海外作家も含め全30編。

この作家の代表作ってこれかなあと思うものもあるかもしれないが、

それは好き好きというもの。

猿の手」(ジェイコブズ)、「おーいでてこい」(星新一)、「女か虎か」(ストックトン)、「開いた窓」(サキ)などショートショートの代表作というべき作品が入っているので、ショートショートの入門書としては良いかも。

初めて読んだ話の中では都筑道夫の「らんの花」が面白かった。

 

貧者の息子

「貧者の息子 カビリーの教師メンラド」

ムルド・フェラウン 水声社 2016年

 

貧者の息子 カビリーの教師メンラド (叢書《エル・アトラス》)

 

フランス植民地下のアルジェリアに生まれ、小学校教員として働きながら作家活動をした著者の自伝的小説。アルジェリアでは国民文学とされてきたという。カビリー人の独特な文化や慣習とともに閉ざされた世界での家族の物語が語られていく。

物語の最後、これからの人生について、自分に向いている仕事をし、できうる範囲で他人に親切にし、日々の生活の中から自分なりの教訓をひきだして歩んでいけば少なくとも悔いることはないだろう・・・というようなことが書かれていて、なるほどそうだなあと納得した。

学問のあるロバの話

「学問のあるロバの話」 

セギュール夫人 岩波少年文庫 1954年

 

ロバのカディションが飼い主に向けて書いた、という形をとった作品。

人間の言葉が理解でき知恵のまわるロバが、何人かの飼い主を経て

今に至るまでを回顧する。

知恵を働かせて人気者になるが、その驕りから愛されない存在になってしまうことも。

ロバのカディションの懊悩や告白は、人(いきもの)として他者にどう接するべきか

他者との関係で大切なことは何かといったことを教えてくれる。

 

西欧の東

「西欧の東」

ミロスラフ・ベンコフ著 藤井光訳 白水社 2018年

 

ブルガリア出身の作家が故国を舞台に書いた短編集。

歴史に翻弄され、貧困と不自由さの中で生きる人々。

家族との絆や確執、主人公の複雑な内面が描かれている。

書き出しでぐっと引き込まれ、すぐに主人公との距離が縮まっていく。

あとは流れに身を任せるだけだ。

香りと歴史7つの物語

「香りと歴史7つの物語」

渡辺昌宏著 岩波書店 2018年

 

唐の時代、皇帝に接する全ての者は常に体臭に気を配らなければならず、宮中の女性達は芳気方という体臭を芳しくする処方で口や体から芳香を漂わせるよう努めていたという。

芳気方は現存する日本最古の医学書・医心方にも作り方が書かれており、丁子・甘松香・麝香など計10種の原料を複雑な工程を経て錠剤にするのだとか。

これを飲むと口、体、着ている服、やがては抱いた子供まで香るようになるらしい。

信長の蘭奢待楊貴妃の竜脳、アレクサンドロス大王が好んだ乳香など、古代から現代までの香りの物語。岩波ジュニア新書なので、とてもわかりやすい。

小鼠ニューヨークを侵略

「小鼠ニューヨークを侵略」

レナード・ウイバーリー著 清水政二訳 東京創元社 1976年

 

コメディ映画にしたら面白そう・・・と思ったらすでに映画化されているらしい。

ヨーロッパの小国がアメリカに宣戦布告し、

結果的に世界平和をもたらすというファンタジー

最後のオチもなかなかいい。

飛ぶ教室

飛ぶ教室

ケストナー著 丘沢静也訳 光文社 2006年

 

飛ぶ教室 Kästner, Erich(著) - 光文社

 

タイトルだけは知っていたのに、ずっと読まずにいたが、驚きの名作だった。

ギムナジウムの少年たちの一生懸命さが胸をうつ。

美しく切ない姿は正視できないくらいだ。

電車の中で読んで涙をこらえるのに苦労した。

子供の頃に読んでいたら、むしろこのような感じ方はしなかっただろう。

大人になって巡り合えた宝物のような作品。