Coataroの読書ときどきヒトリゴト

本を読んで感じたことなどを記しています。

2021-01-01から1年間の記事一覧

諸国物語

「諸国物語」ポプラ社 2008年 辞書のような厚さで、手が疲れる重さ。 世界の名短編21を集めた一冊だという。 1149ページ。家の体重計で計ってみたら1.9kgあった。 1冊でこんなボリュームの本を読んだのは初めてだ。 一番好きだったのが「一人舞台」(ストリ…

孤独な散歩者の夢想

「孤独な散歩者の夢想」 ルソー著 今野一雄訳 岩波書店 1960年 世間から追われ田舎に引っ込んだ老人の繰り言。なぜここまで人々に対し呪詛の言葉を語り続けなければならなかったのだろうか。もう自分は孤独のうちに精神の安定をみているので他人はどうでもい…

雨/赤毛

「雨/赤毛」 モーム著 中野好夫訳 新潮社 2012年 多分こうなるんだろうという結末に、やはり落ち着いた「雨」。 登場人物たちのいや〜な気分がうまく書けていてシンクロしてしまう。 他の短編も、〝説明し難い嫌な気分”をうまく表現していると感じた。

番号は謎

「番号は謎」 佐藤健太郎著 新潮社 2000年 電話番号や郵便番号、テレビチャンネルなど身近なものから、原子番号や交響曲など様々なジャンルの番号について歴史や数字の表す意味などを解説する。番号を通して色々な業界の事情もわかって楽しい。 あるテレビ局…

アーサー・ランサムのロシア昔話

「アーサー・ランサムのロシア昔話」 アーサー・ランサム著 フェイス・ジャックス挿絵 神宮輝夫訳 白水社 2009年 なかなか厳しい話が多く、それゆえ面白い。 中でも「高価な指輪」は予想を裏切る展開でいい。

押し出せ青春

「押し出せ青春」 須藤靖著 小学館 2006年 駆け出し力士の成長物語。相撲の世界のことも楽しく知ることができる。 タイトル通りの青春小説。軽く読めて読後感も良い。

アンデスの奇蹟

「アンデスの奇蹟」 ナンド・バラード著 海津正彦訳 山と渓谷社 2009年 1971年にアンデス山中に墜落した飛行機の生存者が72日間を生きのびて救出された。その当事者の一人が書いたノンフィクションだ。雪山での辛く悲しく厳しい時間がこれでもかと続き、生き…

百物語怪談会

「百物語怪談会」 泉鏡花ほか著 東雅夫編 筑摩書房 2007年 実際にあった話をまとめたという怪談集。オチがないのが本当っぽい。 「怪談会」という1909年発行の稀覯書(泉鏡花序文)や雑誌での対談などが収められている。

コンゴ・ジャーニー

「コンゴ・ジャーニー 上下」 レドモンド・オハンロン著 土屋政雄訳 新潮社 2008年 上巻 英国人探検家が幻の恐竜モケーレ・ムベンべを探してコンゴ入りし、主に人的危険に晒されながらアマゾンにたどり着くまで。アフリカの闇は政府や警察等公的な立場にある…

フランク・オコナー短篇集

「フランク・オコナー短篇集」 フランク・オコナー著 阿部公彦訳 岩波書店 2008年 アイルランド人作家の短篇集。「ある独身男のお話」と「はじめての懺悔」がいい。「国賓」も印象に残る。どれもひとつひとつしっかりした世界が見える素晴らしい短篇集。 そ…

塩の水のほとりで

「塩の水のほとりで」 アンジェラ・バーク著 渡辺洋子訳 冬花社 2008年 アイルランドで生きることの難しさを感じる一方で、体の隅々までアイルランドが染み込んでいる登場人物達と、アイルランドへの愛に満ちている著者が羨ましくなる短編集。何も面白いこと…

ナイフ投げ師

「ナイフ投げ師」 スティーヴン・ミルハウザー著 柴田元幸訳 白水社 2012年 9年ぶりに手紙が来た友人を訪ねる「ある訪問」。 友人は田舎で60㎝のカエルと結婚していた。 戸惑う主人公だが、2人の幸福な姿にハーモニーとリズムを感じ、 自分と遠いところに…

小説家になって億を稼ごう

「小説家になって億を稼ごう」 松岡圭祐著 新潮社 2021年 実際に「億を稼いだ」作家による、稼げる小説家になる指南書。 デビューするために、まずどうやって小説を書き始めればいいのかから始まり、デビュー後、書けなくなったら、売れ始めたらと様々な段階…

ジーヴスの事件簿

「ジーヴスの事件簿」 P・G・ウッドハウス著 岩永正勝・小山太一翻訳 文藝春秋 2005年 執事ジーヴスとバーティのほのぼのコメディー。どれもこれもユーモアたっぷりで洒落ていて面白い。20世紀初めに英国で書かれ、イーヴリン・ウォーらが手本とした作品が21…

ザビエルの見た日本

「ザビエルの見た日本」 ピーター・ミルワード著 松本たま訳 講談社学術文庫 1998年 キリスト教布教への本気度と活発な活動ぶりがうかがえる、書簡集に解説を加えた本。 学術文庫なので堅いかなとの予想に反し、結構面白い。 1549年当時のザビエルの気持ちを…

ゆびぬき小路の秘密

「ゆびぬき小路の秘密」 小風さち著 福音館書店 2008年 新しい町に引っ越してきたバートラムが見つけた古びた道・ゆびぬき小路。 古道具屋や古着屋が並ぶ石畳の路地の一番奥には仕立屋ウェブスター。 ある日、バートラムは5つ穴の空いた不思議なボタンがつ…

世界のとんでも法律集

「世界のとんでも法律集」 盛田則夫著 中央公論新社 2007年 「ダンキンドーナツの前に駐車してはいけない」(メイン州サウス・バーウィック地区条例)など、当事者以外から見るとなんとも奇妙な珍法を集めた新書。さらっと楽しく読めた。

図説拷問全書

「図説拷問全書」 秋山裕美著 筑摩書房 2003年 中世ヨーロッパの残酷な拷問は罪人を苦しめる目的ではなく、悪魔に取り憑かれた魂を救うためだったそうだ。自白さえすれば本人の魂は救われると信じられていたらしい。とにかく拷問は怖すぎる。

奇談蒐集家

「奇談蒐集家」 太田忠司著 東京創元社 2008年 「求む奇談」の新聞広告を見て訪れた人々が披露する不思議な体験談。 舞台は狭い路地の奥にひっそりと建つBarストロベリーヒル。 聞き手はエビスと名乗る奇談蒐集家と性別不明の赤い髪の若者氷坂。 奇談と思い…

本棚

「本棚」ヒヨコ舎編 アスペクト 2007年 著名人の本棚の写真と、本人へのインタビュー集。 みうらじゅんが色々なジャンルの本を買ってもすぐ読まずに置いてあって、自分にとってそのテーマがブームになった時に、どこでもドアみたいにその本からスーッと入っ…

ライフサイクルの心理学

「ライフサイクルの心理学 上下」ダニエル・レビンソン著 講談社学術文庫 1992年 アーサー・アッシュの愛読書ということで読んでみた。 40歳を迎えることは人類にとってまだ新しい体験で、その年齢に対し恐れを抱くのは原始時代からの原体験なのだという。で…

静かな闘い

「静かな闘い」 アーサー・アッシュ著 日本放送出版協会 1993年 黒人初のウィンブルドン優勝者で、輸血によるエイズ感染により死去したアーサー・アッシュの自伝。亡くなる2週間前に書きあがったという。とても理知的で誠実な人物像がうかがえる。

岩波新書解説総目録 1938−2019

「岩波新書解説総目録 1938−2019」 岩波新書編集部 岩波書店 2020年 本の目録が好きだ。 こんなにたくさんまだ読んでいない面白そうな本がある、とワクワクする。 1938年の創刊以来3400点あまり刊行されてきたという岩波新書。 その全書名と著訳編者、内容解…

絵はがきにされた少年

「絵はがきにされた少年」 藤原章生著 集英社 2005年 毎日新聞アフリカ特派員のルポルタージュ。ありがちなアフリカのイメージ通りに書かれたものではなく、そこに暮らす者の目線で描かれている。自分の書いたアフリカの記事に紋切り型の見出しをつけられる…

重版未定

「重版未定」 川崎昌平著 河出書房新社 2016年 架空の小出版社・漂流社に勤める編集者が主人公の漫画。 厳しい出版業界の裏話をゆるい絵で描いている。 これはさすがにフィクションだろうと思える部分も含め 赤裸々なエピソードだらけ。 薄っぺらい内容の本…

30の神品

「30の神品 ショートショート傑作選」 江坂遊選 扶桑社 2016年 「一作家一作品の条件で「ショートショートの代表作を一冊にギュッと集めた本」。 星新一、山川方夫、筒井康隆など日本の作家はもちろん、 ヒッチコック、スレッサー、ブラッドベリなど海外作…

貧者の息子

「貧者の息子 カビリーの教師メンラド」 ムルド・フェラウン 水声社 2016年 フランス植民地下のアルジェリアに生まれ、小学校教員として働きながら作家活動をした著者の自伝的小説。アルジェリアでは国民文学とされてきたという。カビリー人の独特な文化や慣…

学問のあるロバの話

「学問のあるロバの話」 セギュール夫人 岩波少年文庫 1954年 ロバのカディションが飼い主に向けて書いた、という形をとった作品。 人間の言葉が理解でき知恵のまわるロバが、何人かの飼い主を経て 今に至るまでを回顧する。 知恵を働かせて人気者になるが、…

西欧の東

「西欧の東」 ミロスラフ・ベンコフ著 藤井光訳 白水社 2018年 ブルガリア出身の作家が故国を舞台に書いた短編集。 歴史に翻弄され、貧困と不自由さの中で生きる人々。 家族との絆や確執、主人公の複雑な内面が描かれている。 書き出しでぐっと引き込まれ、…

香りと歴史7つの物語

「香りと歴史7つの物語」 渡辺昌宏著 岩波書店 2018年 唐の時代、皇帝に接する全ての者は常に体臭に気を配らなければならず、宮中の女性達は芳気方という体臭を芳しくする処方で口や体から芳香を漂わせるよう努めていたという。 芳気方は現存する日本最古の…