Coataroの読書ときどきヒトリゴト

本を読んで感じたことなどを記しています。

2022-01-01から1年間の記事一覧

サヴァイヴ

「サヴァイヴ」 近藤史恵著 新潮社 2011年 「サクリファイス」「エデン」に続くサイクルスポーツ小説。 今回は短編集。サクリファイス以前の話とエデン以降の話が混ざっている。 サクリファイスの石尾の若い頃のエピソードが印象的。 最後のドーピングに関わ…

赤い魚の夫婦

「赤い魚の夫婦」 グアダルーペ・ネッテル著 宇野和美訳 現代書館 2021年 赤い魚を飼い始めた主人公。 妊娠中の彼女が魚のことを語っているが、 自分たち夫婦のことを語っているようにも見える。 二人の日常を切り取った短編集。 ドラマチックな起伏はないが…

本の幽霊

「本の幽霊」 西崎憲著 ナナロク社 2022年 古風な装丁とそこにあしらわれた、これもまた古風な装画。 金色の箔押しのタイトル。趣向が凝らされた遊び紙。 読み始める前にすでに魅せられている。 本屋の棚にささっているのを見つけたら、 私のために用意され…

忠臣蔵入門

「忠臣蔵入門 映像で読み解く物語の魅力」 春日太一著 KADOKAWA 2019年 副題の通り、本ではなく映像作品における忠臣蔵の歴史と魅力に迫る。 オールキャストで様々な見せ場を重ねていく忠臣蔵。 どんな見せ場があって、どんな配役がなされ、 そこにはどのよ…

それでも人生にイエスという

「それでも人生にイエスと言う」 V .フランクル著 山田邦男ほか訳 1993年 春秋社 安楽死を否定し、どのような人にもどんな状況下であっても、生きる事を肯定し 死についても、死そのものに意味があるのだと説く。 強制収容所での体験を経た著者の、静かで力…

三角帽子

「三角帽子」 アラルコン 岩波書店 1874年に書かれたスペインの小説。短編の王者と言われた作家らしい。 私が読んだ岩波文庫の出版が1939年。旧字で、最初は読みにくかったが、 半分くらい読んだら慣れた。 表題作とともに収められている「モーロ人とキリス…

ギリシア・ローマ名言集

「ギリシア・ローマ名言集」 柳沼重剛編 岩波書店 2003年 中国や日本のことわざだと思い込んでいた言葉が、ローマ起源で驚いた。 ギリシアの哲学者ディオゲネスが気になる。 「全ての日がそれぞれの贈り物を持っている」 (マルティアリス/エピグラム第8巻…

アシェンデン

「アシェンデン」 モーム著 中島賢二他訳 岩波書店 2008年 モームが、スパイだった経歴を生かして書いた連作短編集。 スッキリ、あっさり面白い。 「英国大使閣下」のエピソードが好きだ。

安房直子コレクション4まよいこんだ異界の話

「安房直子コレクション4まよいこんだ異界の話」 安房直子著 偕成社 2004年 「ハンカチの上の花畑」「ライラック通りの帽子屋」 「丘の上の小さな家」「三日月村の黒猫」 子供の頃に親しんだファンタジーのはずだが、 どれも今読むとうすら恐ろしい。 ただ…

忠直卿行状記

「忠直卿行状記」 菊池寛著 昭和23年3月初版の内容を24刷した、昭和41年発行の本を読んだ。 恥ずかしながら読めない漢字や知らない言葉があって、 わからないままに読み進めてしまった。それでも十分面白い。 永井龍男が「へっぽこ先生その他」で書いていた…

へっぽこ先生その他

「へっぽこ先生その他」 永井龍男著 講談社 2011年 物知りのおじさんに面白い話をいっぱい聞かせてもらった、という感じがした。 菊池寛の文庫解説を本人が吉川英治の名をかたって書いていたとか、 中原中也がみんなに嫌われていたとか。 文壇話はもちろん面…

聖ヨハネ病院にて・大懺悔

「聖ヨハネ病院にて・大懺悔」 上林暁著 講談社 2015年 一人称の私小説は、人の話を聞いているようで存外に面白い。 川端康成の死について書いた「上野桜木町」、老いた妹について書いた「姫鏡台」、標題作「聖ヨハネ病院にて」が印象的。決して楽しい話では…

サミング・アップ

「サミング・アップ」 S.モーム著 行方昭夫訳 岩波書店 2007年 社交を嫌い、人生は自分自身のために生きるのが、 実は人間にとって当たり前と分析するモーム。 幾つも共感できる文章があった。 時代も場所も遠く離れた相手だが、親しみを覚えるほどである。

もじモジ探偵団

「もじモジ探偵団」 雪朱里著 グラフィック社 2022年 身近な場所で見かける文字がどうやって生まれ、今に伝わったのかを探る。 視力検査表のCの文字、大手新聞の題字、お菓子「たべっこどうぶつ」のローマ字、 タバコ屋の看板、車のナンバープレートなどなど…

わたしの名前は「本」

『わたしの名前は「本」』 ジョン・アガード著 金原瑞人訳 フィルムアート社 2017年 文字が生まれ、何かに刻まれて「本」となり、 様々な形に変化していく歴史を物語にした作品。 お洒落なイラストで、コンパクトなつくり。 プレゼントに良さそう。

日本SF誕生

「日本SF誕生」 豊田有恒著 勉誠出版 2019年 日本SFの黎明期、その発展に奮闘した人々の物語。 苦労も多かったのだろうが、はたから見ると実に楽しそうだ。 今では有名になった作家達の若かりし頃のエピソードとともに 日本SF界の歩みを知ることができる。

昔日の客

「昔日の客」 関口良雄著 夏葉社 2010年 古本屋「山王書房」の主人による随筆。 出版前に癌で亡くなったため、あとがきを彼の息子が書いている。 復刊の際のあとがきには 『かつて山王書房を訪れ、文字通り「昔日の客」であった皆様、父の話にお付き合いくだ…

青い野を歩く

「青い野を歩く」 クレア・キーガン著 岩木正恵訳 白水社 2009年 アイルランド人作家の短編集。 主人公は皆、窮屈で不自由な思いをしている。 読んでいるとそれぞれの小説の世界にすっかりはまり込み、 さながら水の中にいるような気分。 文章はすっきりして…

父さんのSh*t(クソ)発言、つぶやきます

「父さんのSh*t(クソ)発言、つぶやきます」 ジャスティン・ハルパーン著 仲達志訳 cccメディアハウス 2010年 副題が「毒舌オヤジとぼくとツイッター」。 毒舌と言っても、内容は至極真っ当だ。言い方も気が利いていて面白い。 お父さんは、一本筋が通った男…

空気枕ぶく先生太平記

「空気枕ぶく先生太平記」 夢枕獏著 集英社 2002年 夢枕獏自身をパロディ化したと思われる小説。 ハチャカワ書房の編集者が語る作家の暴露本という体裁。 菊池ひどゆき先生は「馬飼都市所沢」を発表、 ぶく先生は「限りなく透明に近いループをめぐる不夜城の…

新編 閑な老人

「新編 閑な老人」 尾崎一雄著 荻原魚雷編 2022年 中央公論新社 「暢気眼鏡」で芥川賞を受賞した作家の作品集。 作品を読むのはこれが初めてだったが、「昔日の客」(関口良雄著)に出てきた古書店主と作家のエピソードを元にした小説があり、一気に距離が縮…

楢山節考

「楢山節考」 深沢七郎著 新潮社 映画のシーンに見覚えはあるが、原作は未読だった。 夏の暑さの最中に読んだのに足元から冷えてくるような恐ろしい短編だった。 生への執着ゆえの、他者の生命の軽さのようなものが流れていて怖い。

黙殺

「黙殺」畠山理仁著 集英社 2017年 副題が「報じられない”無頼系独立候補”たちの戦い」。 いわゆる泡沫候補者の選挙戦を取材。 マック赤坂を中心に彼らの真剣な戦いをレポートする。 今回の選挙にも、様々な考えを持つ人達が立候補している。 賛成できかねる…

バージェス家の出来事

「バージェス家の出来事」 エリザベス・ストラウト著 小川高義訳 早川書房 2014年 メイン州の田舎で育ったバージェス兄妹。妹の息子が起こした事件をきっかけに、それぞれの人生が大きく揺らぎ始める。それは兄妹が幼い頃に経験した悲劇の記憶にも及ぶ。様々…

ヒューマン・コメディ

「ヒューマン・コメディ」 ウィリアム・サローヤン著 小川敏子訳 光文社 2017年 家計を助けるために電報配達をする14歳の少年ホーマー。彼の目を通して描かれるアルメニア移民たちの物語。 少しずつ登場人物が現れ、それぞれの生活が明らかになっていく。少…

江戸っ子長さんの舶来屋一代記

「江戸っ子長さんの舶来屋一代記」 茂登山長市郎著 集英社 2005年 2018年に亡くなったサンモトヤマ創業者の伝記。 聞き書きなので語り口がそのままで、ご本人の声が聞こえてくるようだ。

ブックセラーズ・ダイアリー

「ブックセラーズ・ダイアリー」 ショーン・バイセル著 矢倉尚子訳 白水社 2021年 クリスマス休暇で帰省した際に、故郷の古本屋を買ってしまった著者。アマゾンの攻勢など出版業界の変化を背景に、田舎の古書店の一筋縄ではいかない日々を綴る。 辛口なユー…

年賀状の戦後史

「年賀状の戦後史」 内藤陽介著 角川書店 2015年 切手の国名表記はいつからでなぜNIPPONになったのか、 干支の柄の切手はどのように選ばれていたのかなど 年賀状と年賀切手にまつわる歴史を総まとめ。 年賀状の歴史を見ると日本の歴史も見えてくる。

樹脂

「樹脂」 エーネ・リール著 枇谷 玲子訳 早川書房 2017年 デンマークの僻地に暮らす一家の常軌を逸した物語。 隔絶された半島で、偏屈な父、穏やかな母と共に暮らす少女リウ。 クリスマスの夜、父が祖母を殺したことをきっかけに、一家の生活は変わっていく…

濹東綺譚

「濹東綺譚」 永井荷風著 本編に加え、「作者贅言」(あとがき)がさらに面白い。 有名作家ってさすがだな〜と思った。 東京音頭が、昭和11年に日比谷公園で催された盆踊りイベントのテーマ曲として作られたと、この本で初めて知った。実際は日比谷公園の角…