Coataroの読書ときどきヒトリゴト

本を読んで感じたことなどを記しています。

アンデスの奇蹟

アンデスの奇蹟」 

ナンド・バラード著 海津正彦訳 山と渓谷社 2009年

 

1971年にアンデス山中に墜落した飛行機の生存者が72日間を生きのびて救出された。その当事者の一人が書いたノンフィクションだ。雪山での辛く悲しく厳しい時間がこれでもかと続き、生きるために仲間の遺体を食べたことも何度も記されている。読んでいる間、気分が悪くなることもあった。しかし、そうした体験の描写ののちにエピローグを読むと、彼のたどり着いた考えや心境をより深く感じられる気がする。

この本の素晴らしいところは実際に生きのびたという事実だけでなく、30年以上たった時点で彼が至った考えにある。このような体験をしたからこそ、人生を肯定的に捉え前向きに楽しむべきだということを実践している。”アンデス”を「最もありふれた話」と言い、人は誰しも自分の”アンデス”があるーーとして、それにとらわれずに生きることの大切さを説いている。