読書日記を始めます。
21年前から読書日記をつけていました。
その中から印象に残った本について
新旧とり混ぜて書いていきたいと思います。
「オリーヴ・キタリッジの生活」
メイン州の田舎町で教師をしている中年女性オリーブ・キタリッジを取り巻く連作短編集。主役として、あるいはほんの脇役として顔を出しながら、70過ぎの老女となっていく。全てを読み終えると、彼女と共にその半生を生きたような気持ちになった。
13篇の中で心に残ったのが「旅のバスケット」。
夫に死なれたかつての教え子が、夫が快復したら行こうと二人で話していた旅のパンフレットが詰まったバスケットを捨てて欲しいという。そんなものを用意して二人で話していたことを、今では恥じているように見える。
しかし、オリーヴは「旅のバスケットを持たない人なんかいるのか?」と思う。誰しも、あてが外れることも知らず似たような旅のバスケット——叶えられない望みや期待の詰まった何か——を抱えて生きているのではないか・・・。
オリーヴは決して愛すべき人物ではない。自分との共通点があるとも思えないのに、いつしか彼女の人生に自らを重ね、様々な出来事に一喜一憂してしまう。それだけに、あることで春を呪っていた彼女に再び生への扉が開かれて少しほっとした。