Coataroの読書ときどきヒトリゴト

本を読んで感じたことなどを記しています。

月の光

「月の光 現代中国SFアンソロジー

ケン・リュウ編 大森望・中原尚哉他訳 早川書房 2020年

 

月の光 現代中国SFアンソロジー ケン・リュウ(編集) - 早川書房

 

「三体」の作者リウ・ツーシンの表題作「月の光」など

14人の中国人作家の短編が16と巻末にエッセイが3篇掲載されている。

バラエティーに富んだ作品群は、色々な味が入った缶入りドロップのよう。

斬新なアイデアが惜しげもなく披露され、作品ごとに感心させられる。

中国の古い時代が舞台の作品などは、それだけで異世界感がある上に

SFのテイストが加わることでさらに面白くなっている。

 

「晋陽の雪」(ジャン・ラン著)

新型の”猛火油車”について、「・・・もうすぐ最新型が発売になるぞ。車名は保時捷(ポルシェ)。時間と捷さを保証するという意味だ。縁起がいいだろう!」という漢字の遊びみたいなところも楽しい。

始皇帝の休日」(馬伯庸著)

統一国家の成就を機に休暇をとり、大好きなゲーム三昧の暮らしを始めると皇帝が宣言、諸子百家が自らの思想を反映したゲームを採用してもらおうと鎬を削る。どうしてこんな設定を思いつくんだろう。面白すぎる。

「宇宙の果てのレストラン ー臘八粥」(アンナ・ウー著)

はるか遠い宇宙の果てにあるレストランを舞台にした連作短編の第一作だという。地球という星の中国という土地からきた料理人の男とその娘、マーヴィンという鬱傾向のアンドロイド給仕とで店をやっている。ファンタジーっぽい展開が好みの作品だ。ぜひ続きを読んでみたい。