Coataroの読書ときどきヒトリゴト

本を読んで感じたことなどを記しています。

ギッシング短篇集

「ギッシング短篇集」 ギッシング著 小池滋編訳 岩波文庫 1997年

 

「ヘンリー・ライクロフトの私記」の著者ジョージ・ロバート・ギッシング

(1857年〜1903年)が書いた短篇8つを選りすぐってまとめたもの。

迷いながら、自らの人生の櫂をうまく操れずにいる人々が描かれている。

 

「境遇の犠牲者」

不遇な環境のせいで大成できないと嘆く自称画家の夫と、彼を支える妻。

ある日、高名な画家がその家を訪れ、風景画に目をとめるが、その作者は・・・。

本当の環境の犠牲者は誰だったのかという残酷な問いかけがなされる物語。

 

「詩人の旅行かばん」

傑作を入れた旅行かばんを若い女に盗まれた青年。

何年も後、一人の女性が友人から預かったと言って旅行かばんを返しにくる。

彼女の語る”友人”の事情とは・・・。

 

文章が整然としていて読みやすい。

登場人物たちとほんの少し距離を取りながら綴られる物語は

それぞれ読みどころがあって楽しめる。

とても好きなタイプの作品集だった。

巻末の解説も良い。英国における出版文化の変化により

短編小説が人気になった経緯がよくわかった。