昔日の客
「昔日の客」
関口良雄著 夏葉社 2010年
古本屋「山王書房」の主人による随筆。
出版前に癌で亡くなったため、あとがきを彼の息子が書いている。
復刊の際のあとがきには
『かつて山王書房を訪れ、文字通り「昔日の客」であった皆様、父の話にお付き合いくださり、本当に有難うございました。残念ながら、その時代にいらっしゃれなかった皆様、父の魂が込められた、この一冊が「山王書房」でございます。いつまでも、そして何度でもいらして下さい』
と締めくくられている。この本を読むことで、実際には会えなかった著者から、本当に話を聞けたような心持になり、彼の文学、作家、そして本そのものへの愛を感じ取ることができる。本ってしみじみ良いものだなあとあらためて実感する作品である。最終章、著者が近代文学館に寄贈した本を眺めつつ、それらとの再会を誓うくだりは、それが叶わなかったが故に涙を禁じ得ない。