「父の詫び状」
向田邦子著 文藝春秋 2006年
エッセイの名手と言われている事を知ってはいたが、
実は一度も読んだがことなかった向田邦子。
標題作が冒頭に載っている。
伊勢海老をもらったエピソードで始まった回想が頑固だった父の思い出へと広がり、
最後の「それが父の詫び状であった」で締めくくられる流れは見事と言うしかない。
期待をさらに超える印象であった。
他の作品でも、いくつかの出来事を次々と書いており、「この話、テーマと関係が
あるのかな」と感じるものもあるのだが、なぜか違和感なく、流れに乗って読めてしまう。
「そう言えばね・・・」と言われて、次々話を聞いているような感じだ。