Coataroの読書ときどきヒトリゴト

本を読んで感じたことなどを記しています。

独裁者との交渉術

「独裁者との交渉術」 

明石康著 木村元彦インタビュー・解説 集英社 2010年

 

信頼する書き手・木村元彦氏のインタビュー。

カンボジアPKOユーゴスラビア紛争、

スリランカ問題における明石氏の仕事について尋ねた。

とにかく頭が良く知識がある人同士の会話で内容が濃い。

カンボジア問題に関してはかなりスッキリ理解できた。

ユーゴスラビアについては自分も米国寄りのセルビア極悪説に

洗脳されていたのかなと思った。

あとがきで今の日本人に対し、ぬるく心地良い悲観論から脱するべきだと言っていたのが印象に残った。

和平への道をひらくため紛争各国トップの話をよく聞き、公平であること、

情報を持つ様々な人の話を聞くこと、その上で自身がよく考えておこなった決断なら後悔する必要はないと述べていた。

「諸般の事情をよく考え意見も国籍も違う同僚たちの意見に十分に耳を傾けてから、その時点で最善の決断を自分が下したら、あとで正しかっただろうかなどと反省しないことにしている。大事なのは、そのときに考えられる一番よい、それしかない決心をすることで、それを慎重に丁寧にしたのであれば、後になって左見右見するのは未練たらしい」とも語っている。

 

 

ぼくは死んでいる

「ぼくは死んでいる」 

フィリップ・ベッソン著  稲松三千野訳 早川書房 2005年

 

死んでしまったぼく(ルーカ)、その恋人のアンナ、

男娼でルカのもう一人の恋人レオの三人がそれぞれ一人称で語り続ける小説。

ルーカはフィオレンティーナのサポーターだったらしい。

「自分がフィオレンティーナのファンだってことを認めてくれる女とは恋に落ちるしかない」というのがさすが。結末は呆気ないがひきこまれる物語。

ブライヅヘッドふたたび

「ブライヅヘッドふたたび」 

イーヴリン・ウォー著  吉田健一訳 筑摩書房 1990年

 

うっとりするような文章があって心に残った作品。

セバスチアンの滅びゆく美少年ぶりも魅力的。

彼の台詞を間近で聞いたらきっと恋してしまうことだろう。

 

「・・・車と、苺が一籠とそれからシャトー・ペラゲーの白葡萄酒が一本ある。ーー君がまだ飲んだことがないものだから、飲んだことがあるような顔をしても駄目だよ。苺と一緒だと天国の味がする」

「・・・もう陰が欲しくなる程暑くて、羊が芝を食べに来る小さな丘に楡の木が何本か枝を伸ばしている下で、私達は苺と一緒に白葡萄酒を飲み、この取り合わせはセバスチアンが言った通り、何とも甘美なものだった。そして私達は太いトルコの巻き煙草に火を付けて仰向けに寝転び、セバスチアンは私達の上に重なっている楡の木の葉を、私はセバスチアンの横顔を見詰めていた。煙草の青味掛った灰色の煙が木の葉の青味掛った緑色の影に真直ぐに昇って行き、煙草の匂いが私達の廻りに満ちている夏の幾つもの匂いと混じり、黄金色をした葡萄酒の酔いが私達を芝からほんの僅かばかり浮き上がらせて、宙に私達を支えているようだった。」

「『ここは金の甕を埋めるのに丁度いい所だ。』とセバスチアンが言った。『私は私が幸福な思いをした場所毎に何か貴重なものを埋めて、そして私が年を取って醜くてみじめな人間になってからそこへ戻って来てそれを掘り出しては、昔を回顧したいんだ。』」

 

人間の顔は猿よりこわい

「人間の顔は猿よりこわい 高校生創作名言633選」

都立一橋高校名言研究会 ベストセラーズ 1996年

 

「意志の弱い人ほど物に頼る」

「ちゃんとした意志があれば足どりも軽くなる」

「あせるとあせることしかできない」

「腹が立ったら寝るのが一番」

「勇気の出ない時は何もするな」

「酔っぱらいに限って勘が鋭い」

うう、その通りかも。高校生にして色々悟っていて感心した。

「ママは何でも知っている」

「ママは何でも知っている」

ジェイムズ・ヤッフェ著 小尾芙佐訳 早川書房

 

ママは何でも知っている ジェイムズ・ヤッフェ(著/文) - 早川書房

 

刑事の”僕”が解けない謎を、ママに話すとあっという間に解決してしまう。

安楽椅子探偵もの。

実際に執筆されたのは結構昔なのに、とても現代っぽい。

嫁と姑のやりとりが面白い。

眠る前に読む短いエッセイ

「眠る前に読む短いエッセイ」

ペーター・バヘーア著 畔上司訳 草思社 2005年

 

眠る前に読む短いエッセイ Bachér, Peter(著) - 草思社

 

ドイツの週刊新聞ヴェルト・アム・ゾンタークに連載されたコラムをまとめたもの。

ドイツではほぼ毎年刊行され、この本が書かれた当時で10冊にもなっているという。

読みやすく、うなずける内容のエッセイ。

著者はドイツの詩人・小説家テオドール・シュトルムのひ孫。

ディナモ

ディナモ ナチスに消されたフットボーラー」

アンディ・ドゥーガン著 千葉茂樹訳 晶文社 2004年

 

ディナモ : ナチスに消されたフットボーラー Dougan, Andy(著) - 晶文社

 

涙・・・。

ヨーロッパのクラブチームが背負っているものの重さは日本とは桁違いだ。

ウクライナにこんな不幸な歴史があったことを、恥ずかしながら初めて知った。

GKニコライ・トゥルセヴィッチの死の記録は涙を抑えられない。