水と原生林のはざまで
あの有名なシュバイツァー博士のアフリカでの医療の記録である。
そもそも、この本を読む前に「シュワイツァー」(山室静 旺文社文庫 昭和41年)を見つけ、著者のまえがきにほろりときて購入。本当に偉い人だったんだなと感心していた。
「人間的な真実の人格と、それによる文化人たる能力をまもるのがここでは非常に困難であることは原生林に見る黒白両人種の問題中の大きな悲劇である」
シュバイツァー博士ほどの偉人でも、心に沢山の矛盾を抱えながら熱帯での医療奉仕という大変な仕事を続けていたとは意外だった。牧師でもある博士はなんの迷いもなく意思を貫いていたのかと思っていた。信仰に支えられ、相当な覚悟をして飛び込んだ道であっても迷いが生じるものなのだ。ただそれでも実行し、さらに続けていくことが何かを実現することに繋がる。迷いがあるからといってそこでやめてしまえば何も残らない。迷いながらでも行動し続けた博士への尊敬の念が一層深まった。