2021-05-23 博士の愛した数式 「博士の愛した数式」 小川洋子著 新潮社 2003年 全て失われることを前提に書かれているため 読んでいる間中、かすかな胸の痛みにさいなまれ続ける。 ”未亡人”の立場で読むと、究極のラブストーリーでもある。 永遠に愛し続けてくれているものの、その愛の対象である自分は 過去の自分でしかないという状況は悲しい。 しかし、決して自分以外を愛することはないという事実は甘美すぎる。
2021-05-19 学問のすゝめ 「学問のすゝめ」 福沢諭吉著 有名な一冊だが、私の印象に残ったのは 人間社会で一番怖いのはひがみ根性であり、 それが起こるのは人間の自由を束縛するからだという主張。 極端な言いっぷりがおかしいが、うなずける所も多い。
2021-05-15 あたまをつかった小さなおばあさんがんばる 「あたまをつかった小さなおばあさんがんばる」 ホープ・ニューエル著 松岡享子訳 福音館書店 2019年 子供の頃「あたまをつかった小さなおばあさん」を楽しく読んだ。 本書は冬の間ひと休みしたおばあさんが 春の仕事に取り掛かるという続編。 大人になって読むと、実はおばあさんは決して正しい選択をしているわけではなく むしろ非効率な選択をしている。 でも自分の決断に大満足し、なんでもポジティブに考えている。 結果としてそれは、賢い選択と言えるのだろう。
2021-05-11 石の葬式 「石の葬式」 パノス・カルネジス著 岩本正恵訳 白水社 2006年 ギリシアの田舎町、個性的な村人達が主人公の連作短編集。 ハッピーな話はないのだが、最後に色んな意味で”一掃”されてしまい 読後感は悪くない。 映像化した作品を見てみたくなった。 これがデビュー作とは恐るべし。
2021-05-10 ぼくのともだち 「ぼくのともだち」 エマニュエル・ポーヴ著 渋谷豊訳 白水社 2013年 友達を求めて彷徨う青年の独白。 すごく嫌なヤツだが 「こうなったらどうしよう」「こうだったらいいのに」という想像が極端なだけで 誰もが似たような思いにかられることがあるのではないだろうか。
2021-05-09 おとぎ話の忘れ物 「おとぎ話の忘れ物」 小川洋子著 ポプラ社 2012年 世界中の遺失物管理所から拾ってきたおとぎ話を集めた移動図書館。 スワンキャンディーというキャンディー屋の奥にあるという。 そこを訪れる人はキャンディーを一粒口に入れ、ゆっくりと本を読む。 羨ましい。スワンキャンディーも素敵だ。
2021-05-05 脱出記 「脱出記」 スラヴォミール・ラウイッツ著 海津 正彦訳 ソニー・マガジンズ 2005年 「シベリアからインドまで歩いた男たち」と副題にあるように シベリアの捕虜収容所から脱走し、1年歩き続けてインドにたどり着いたポーランド人の手記。 ゴビ砂漠もヒマラヤも身ひとつで越えていったとは信じられない。 一人ではなく何人かでまとまっていたから歩きぬけたというが その仲間とは生還後、誰とも再会していないという事実が 過去の経験の過酷さを物語っている気がする。