「ブックセラーズ・ダイアリー」 ショーン・バイセル著 矢倉尚子訳 白水社 2021年 クリスマス休暇で帰省した際に、故郷の古本屋を買ってしまった著者。アマゾンの攻勢など出版業界の変化を背景に、田舎の古書店の一筋縄ではいかない日々を綴る。 辛口なユー…
「年賀状の戦後史」 内藤陽介著 角川書店 2015年 切手の国名表記はいつからでなぜNIPPONになったのか、 干支の柄の切手はどのように選ばれていたのかなど 年賀状と年賀切手にまつわる歴史を総まとめ。 年賀状の歴史を見ると日本の歴史も見えてくる。
「樹脂」 エーネ・リール著 枇谷 玲子訳 早川書房 2017年 デンマークの僻地に暮らす一家の常軌を逸した物語。 隔絶された半島で、偏屈な父、穏やかな母と共に暮らす少女リウ。 クリスマスの夜、父が祖母を殺したことをきっかけに、一家の生活は変わっていく…
「濹東綺譚」 永井荷風著 本編に加え、「作者贅言」(あとがき)がさらに面白い。 有名作家ってさすがだな〜と思った。 東京音頭が、昭和11年に日比谷公園で催された盆踊りイベントのテーマ曲として作られたと、この本で初めて知った。実際は日比谷公園の角…
「戦友の恋」 大島真寿美著 角川書店 2009年 親友を亡くした20代の女性が一人で生き、生活し続けていく様子を綴った連作短篇集。 頑張りたくないという気持に共感。 最後の方は40代になっているのではと思われる。 このくらいの年齢の人の、今までの人生に価…
「読書案内」 S.モーム著 岩波書店 モームが英仏米などの小説を若者向けに案内。言い方がいちいち面白い。 ヘミングウェイの小説を胸毛を生やした無頼漢のような散文と言ったり、 ヘンリー・ジェイムズは魂がけちくさいとさらっと言ったり。 魂がけちくさい…
「イモムシハンドブック」 安田守著 文一総合出版 2010年 イモムシと一括りに言ってもこんなに色々な種類の虫がいるとは。 地味なヤツからえらく目立つ格好まで本当に様々。 一匹一匹よく見てみるとなかなか愛らしい。 ヒメキマダラヒカゲの幼虫なんてすごく…
「オシムからの旅」 木村元彦著 理論社 2010年 イビチャ・オシム、ストイコビッチという旧ユーゴスラビアフットボール界の英雄への取材から始まった旅は、意外にも著者が住む日本へと帰ってくる。民族とは何かを問いかけ、この地球で様々な人間が生きていく…
「たいした問題じゃないが:イギリス・コラム傑作選」 行方昭夫編訳 岩波書店 2009年 20世紀初頭、ガードナー、ルーカス、リンド、ミルらの名エッセイをまとめた本。 今も昔も変わらないなあと感じる内容もある。 ガードナーとルーカスが面白かった。
「しみじみ読むイギリス・アイルランド文学」 阿部公彦編 松柏社 2007年 12の短編が収められているが、カズオ・イシグロとフランク・オコナーが一番良かった。アイルランド出身の作家本人やその小説の登場人物達は、アイルランドから抜け出したくて仕方ない…
「マルコヴァルドさんの四季」 イタロ・カルヴィーノ著 関口英子訳 岩波書店 1977年 貧しい労働者で子沢山のマルコヴァルドさんの日常を綴る連作短編集。 都会の片隅でつましく暮らし、暗くなりがちな生活の中に、ほんのりと暖かくなるようなエピソードやほ…
「殺人者たちの午後」 トニー・パーカー著 沢木耕太郎訳 2009年 死刑のないイギリスで終身刑となった殺人者だちに1対1でインタビュー。様々な人がいるが、人の命を奪ってしまった自分を一生許せない、他の誰かに許されようと自分はそのことを知っている・…
「夜会服」 三島由紀夫著 角川書店 2009年 社長令嬢の新婚生活をめぐる大したことのないストーリーを面白く書ける、さすが三島由紀夫。表現が秀逸で只者ではない。 嫉妬のことを、ガラス越しに蛾が自分に向かって無数に突進してくる様子にたとえた所がすごい…
「奇縁まんだら」 瀬戸内寂聴著 日本経済新聞出版社 2008年 様々な作家との交友を綴った豪華絢爛な一冊。 赤裸々な暴露話をさらっと書いていて、 あの世から「ちょっと待った!」という声が聞こえてきそう。 今頃寂聴さんはみんなに取り囲まれているかも。
「コスモポリタンズ」 サマセット・モーム著 龍口直太郎訳 筑摩書房 1994年 高級チョコレートのように小粒なのに満足感が高いショートストーリー集。字数制限のある雑誌で連載していた短編をまとめただけあって、無駄のない表現でどれも面白い。全部読んでし…
「英国陸軍式男の必修科目270」 英国陸軍著 阪急コミュニケーションズ 2009年 どうしてこれが必修なの?というスキルが目白押し。 ちょっと斜に構えた語り口がおかしみを増している。 ガムが髪についたらピーナッツバターを塗ると取れるらしい。 必修に「…
「聖母の贈り物」 ウィリアム・トレヴァー著 栩木伸明訳 国書刊行会 2007年 アイルランド人作家の短編集。 暗いかもしれないが、力のある作品だ。 読み始めるとすぐにその世界にとらわれる。 小説ががっちりと私を捕まえて離さない。
「人情馬鹿物語」 川口松太郎著 論創社 2009年 登場人物はみな情にもろく、結果お人好しが馬鹿をみる。 しかし、読後感がさわやかの一言に尽きる。 大正期の深川・森下を舞台にした連作短編集。
『児玉清の「あの作家に会いたい」』 児玉清著 PHP研究所 2009年 出てくる作家達は、子供の頃から作家になろうと思っていた人が殆ど。 ブラジルで何度も読みボロボロになった「逃れの街」を持ってきたカズに、サインして欲しいと言われて泣きそうになったー…
「毎日が日曜日」 城山三郎著 新潮社 1979年 サラリーマンの悲哀がよく書けていて共感できる。 主人公の一人は現役の企業戦士、もう一人は定年退職してやることのない暇人。 誰からも必要とされない人生は淋しいが、会社に尽くしたっていいことはないーー。 …
「ヨシアキは戦争で生まれ戦争で死んだ」 西高直子著 講談社 2007年 太平洋戦争後に米兵と日本人女性との間に生まれた少年がアメリカ人の養子になり、ベトナム戦争で命を落とすまでを追った伝記。不幸な生い立ちにもかかわらず、人から愛される青年に育った…
「銀輪の覇者」(上下) 斎藤純著 早川書房 2007年 戦前に行われた大日本サイクルレースを舞台に、様々な男達が暗躍するミステリー仕立ての自転車小説。主人公の人物設定が劇画みたいだが、楽しく読める。
「物いふ小箱」 森鉄三著 筑摩書房 1988年 八雲に聞かせたかった怪談や不思議話を集めたという短編集。 不思議だけれど、ゾッとするほどではない、程よく品のあるお話だ。 「居酒屋」が良かった。
「インディアスの破壊をめぐる簡潔な報告」 ラス・カサス著 染田秀藤訳 岩波書店 2013年 コロンブスがアメリカ大陸〜南米を”発見”した後、スペイン人入植者達が中南米の居住者達に加えた残虐非道な蛮行をまとめた報告書。修道士が見かねて、スペイン国王にこ…
「後世に伝える言葉」 井上一馬著 小学館 2006年 副題が「新訳で読む世界の名演説45」。 エリザベス1世がスペイン無敵艦隊を迎え撃つ兵士たちに話した演説、ソクラテス最後の弁明、ダライ・ラマ14世のノーベル平和賞記念スピーチなど多彩な人々の演説が…
「諸国物語」ポプラ社 2008年 辞書のような厚さで、手が疲れる重さ。 世界の名短編21を集めた一冊だという。 1149ページ。家の体重計で計ってみたら1.9kgあった。 1冊でこんなボリュームの本を読んだのは初めてだ。 一番好きだったのが「一人舞台」(ストリ…
「孤独な散歩者の夢想」 ルソー著 今野一雄訳 岩波書店 1960年 世間から追われ田舎に引っ込んだ老人の繰り言。なぜここまで人々に対し呪詛の言葉を語り続けなければならなかったのだろうか。もう自分は孤独のうちに精神の安定をみているので他人はどうでもい…
「雨/赤毛」 モーム著 中野好夫訳 新潮社 2012年 多分こうなるんだろうという結末に、やはり落ち着いた「雨」。 登場人物たちのいや〜な気分がうまく書けていてシンクロしてしまう。 他の短編も、〝説明し難い嫌な気分”をうまく表現していると感じた。
「番号は謎」 佐藤健太郎著 新潮社 2000年 電話番号や郵便番号、テレビチャンネルなど身近なものから、原子番号や交響曲など様々なジャンルの番号について歴史や数字の表す意味などを解説する。番号を通して色々な業界の事情もわかって楽しい。 あるテレビ局…
「アーサー・ランサムのロシア昔話」 アーサー・ランサム著 フェイス・ジャックス挿絵 神宮輝夫訳 白水社 2009年 なかなか厳しい話が多く、それゆえ面白い。 中でも「高価な指輪」は予想を裏切る展開でいい。